個人事業主の皆様、「売上は多ければ多い方が良い」と思っていませんか?
実は、売上は多い方が良いとは限りません。
なぜなら、個人事業主は稼げば稼ぐほど、自分の時給が下がっていくからです。
売上が沢山上がってたとしても、自分の時給が低いのは、良い状態ではありません。
本記事では
- 個人事業主が、稼げば稼ぐほど時給が下がってしまう理由
- 時給を下げないようにするには、どうすればいいか?
について、解説していきます。
名前:スフィンクス(税理士)
税理士業界で、10年間経験を積んだのち独立。
小規模事業者の経営支援や、法人化コンサルを中心に活動中。
私の詳しいプロフィールはこちらです。
時給が下がる原因は、個人事業主に適用される税率
稼ぐほど自分の時給が下がる原因は、「稼ぐほど、取られる税金の割合(税率)」が高くなるからです。
<個人事業主に適用される税率>
稼ぎ (課税所得) | 概算の税率 (所得税・住民税・事業税) |
---|---|
195万円未満 | 15% |
195万円~330万円 | 20% |
330万円~695万円 | 35% |
695万円~900万円 | 38% |
900万円~1800万円 | 48% |
1800万円~4000万円 | 55% |
4000万円~ | 60% |
<よくある勘違い>
例えば、課税所得が800万円の人は、800万円全てに38%の税率が適用されるわけではありません。
- 195万円未満の部分 ⇒15%
- 195万円~330万円の部分 ⇒20%
- 330万円~695万円の部分 ⇒35%
- 695万円~800万円の部分 ⇒38%
というように、800万円を細かくわけて、それぞれの部分に応じた税率が適用されます。
稼げば稼ぐほど税率が上がり、手取り収入の割合が少なくなる。
つまり、「稼ぐほど時給が下がってしまう」というわけです。
次からは、時給を下げないための方法を解説します
時給を下げない方法1:仕事をセーブする
単純な話ですが、税率があがる手前で仕事をセーブしておけば、時給は下がりません。
具体的にどれくらいセーブすればいいの?
どのくらいでセーブしておくかは、その人の価値観次第です。
- どの程度の税率なら、許容できるか?
- どの程度、仕事以外の時間が欲しいか?
を、よく考えてみましょう。
たとえば、
- 税率20%までしか許容できないなら、課税所得は300万円程度にしておく。
- 税率38%まで許容できるなら、課税所得は900万円程度にしておく。
といったように、許容できる税率を決めて、稼ぎ(課税所得)をセーブするのも一つの選択肢です。
また、「どれくらい仕事以外の時間が欲しいか?」も重要な要素です。
お金よりも時間が重要だと考える方は、時給を下げてまで稼ぎを増やす必要がない場合もあるでしょう。
時給を下げない方法2:仕事を選ぶ
時給を下げないためには、単価が高い仕事を受けていくことが重要です。
同じ単価の仕事を受け続けても、「稼ぎと連動して高くなる税率」によって、自然と時給は下がってしまうので。
特に課税所得330万円以上の段階になると、税率が20%⇒35%になり、15%も上がってしまいます。
この段階に突入したら、単価が高い仕事も積極的に狙い、時給が下がらないようにしましょう。
時給を下げない方法3:自分の稼働時間を減らす
同じ稼ぎでも、自分の稼働時間が増えるほど、時給は下がっていきます。
つまり、自分の稼働時間を少なくすれば、時給は上がっていくわけです。
自分の稼働時間を少なくする方法は、3つあります。
- 従業員を雇う
- 仕事を外注する
- 別の誰かに丸投げし、紹介料をもらう
1.従業員を雇う
従業員を雇って、自分の稼働時間を減らします。
メリット・デメリットは、以下の通りです。
- 仕事のクオリティの管理がしやすい
- 従業員が育てば、任せられる仕事の範囲が広がる
- 長期的な事業拡大を狙うには、最も適した方法
- 事務手続きが面倒になる場合がある
- 消費税の計算上、外注より不利になる(課税事業者のみ)
- 従業員の退職リスクがある
2.仕事を外注する
仕事の一部を、別の業者に外注します。(仕事の全体の責任は、自分が負います。)
メリット・デメリットは、以下の通りです。
- 消費税の計算上、人を雇うより有利になる(課税事業者のみ)
- 3つの方法の中で、最も粗利益が大きくなる
- 仕事のクオリティの管理がしにくい
- 重要な仕事を任せにくい
3.別の誰かに丸投げし、紹介料をもらう
取ってきた仕事を、同業者などに丸投げして、紹介料をもらいます。
仕事は全て紹介先が行うため、仕事の責任は紹介先が負います。
メリット・デメリットは、以下の通りです。
- 3つの方法の中で、自分の稼働時間を最も減らせる
- 自分が仕事の責任を負う必要がない
- 3つの方法の中では、最も粗利益が少なくなる
時給を下げない方法4:稼ぎを分散する
稼ぎが多くなるほど税率が高くなり、時給が下がってしまいます。
つまり、稼ぎを分散できれば低い税率が適用され、時給が下がるのを防げます。
稼ぎを分散させる方法は、次の2つです。
- 家族に給料を支払う
- 法人成り(法人化)する
家族に給料を支払う
家族に給料を支払えば、支払った給料分だけ、高い税率を回避できます。
<具体例>
自分の課税所得:800万円(税率38%)
家族:妻(専業主婦)
給料:100万円
妻に払った給料100万円は、税率38%を回避できる
⇒38万円(100万円×38%)税金が安くなる
個人事業主が家族に給料を払うためには、いくつか要件があります。
詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:【節税】家族給料を経費にする4つの条件【自営業・フリーランス】
法人成り(法人化)する
個人事業を法人成りすれば、稼ぎを個人と法人に分散できるので、高い税率を回避できます。
分散ができる理由は、法人から自分に役員報酬を支払えるからです。
課税所得が700万円の個人事業主が、法人成りして役員報酬を400万円受け取るとどうなるか、みてみましょう。
<具体例:法人成りする前>
自分の課税所得:700万円(税率38%)
稼ぎを分散できていないので、税率が高くなってしまいます。
<具体例:法人成りした後>
(法人側)
法人の粗利益:700万円
役員報酬:500万円
法人の純利益:200万円(税率約22%)
(個人側)
役員報酬:400万円
給与所得控除:124万円
課税所得:276万円(税率20%)
個人、法人のいずれの税率も38%から20%程度まで減少しました。
個人側の「給与所得控除」って何?
給与所得控除は、サラリーマンに認めらている控除です。
給与所得控除分(具体例の場合は124万円)は、税金が0になります。
この「給与所得控除」を使えるのも、法人成りする大きなメリットです。
まとめ:個人事業主は時給を意識して仕事をしよう
売上が増えていても、自分の時給が下がっているなら、良い状態ではありません。
「稼ぎと連動して高くなる税率」によって、時給は下がりがちです。
時給を維持するには、
- 仕事をセーブする
- 仕事を選ぶ
- 自分の稼働時間を減らす
- 所得を分散する
などの、対策が必要です。
個人事業主の方は、「自分の時給が下がっていないか?」を意識して、仕事をしていきましょう。
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