税金には様々なものがありますが、全部を知っておく必要はありません。
本記事では、小さな会社の経営者が知っておくべき税金をピックアップして、まとめました。
- 会社にかかる税金について、網羅的に知ることができます。
- どの時期に、どれくらい納税資金を用意すればいいか分かります。
- 税金の基礎を知ることで、節税についても理解が進みます。
名前:スフィンクス(税理士)
税理士業界で、10年間経験を積んだのち独立。
小規模事業者の経営支援や、法人化コンサルを中心に活動中。
法人税、住民税、事業税
どんなとき? | 利益が出たとき |
いつ? | 決算日から2ヶ月以内に |
いくら払う? | 利益の22~34%を払う |
まずは会社の代表的な税金、「法人税、住民税、事業税」です。
- 法人税は、税務署
- 住民税は、都道府県と市町村
- 事業税は、都道府県
に、税金を払います。
それぞれ別々の税率で、税金の申告書も別々。
ただし、「会社の利益に対してかかる税金」というのは同じなので、「法人税・住民税・事業税」をひとつの税金として考えると、分かりやすいです。
税金を払う流れは、次の通り。
- 税務署・都道府県・市町村に税金の申告書を提出
- 送られてくる納付書に、計算した税金を記載して納付する
上記を、決算日から2ヶ月以内に行います。
どれくらいの税金になるの?
税金は、利益×税率で計算します。「法人税、住民税、事業税」の税率は、下記の通りです。
利益 | 税率 |
---|---|
800万円までの利益 | 約22% |
800万円を超える利益 | 約34% |
具体例1)利益が300万円の場合
300万円×22%=66万円
具体例2)利益が1,000万円の場合
- 800万円×22%=176万円
- 200万円×34%=68万円
合計:176万円+68万円=244万円
「法人税・住民税・事業税」は利益に対してかかる税金なので、赤字の場合は払う必要なし。
ただし住民税だけは、利益に関係なく払う「均等割り」が、必ず7万円ほどかかります。
また、次に解説する予定納税(税金の前払い)があるなら、予定納税を差し引いた残りの額を支払います。
「法人税・住民税・事業税」は利益に対してかかる税金ですが、利益が出ていても繰越欠損金があれば税金がかかりません。
- 繰越欠損金とは?
-
過去10年以内に出た赤字のこと
過去10年以内に赤字が出ていれば、当期の利益と相殺が可能です。
相殺後の利益が0になれば税金は発生しません。(約7万円の均等割りは、かかります。)
法人税、住民税、事業税の予定納税
どんなとき? | 前期の法人税が20万円以上のとき |
いつ? | 前期の決算日から8ヶ月以内に |
いくら? | 前期の税金の半額を払う |
- 予定納税とは?
-
税金の前払いのこと
前期の法人税が20万円を超えていたら、税金の前払いが必要。
税務署・都道府県・市町村から送られてくる納付書で、前期に払った税金(年間の税額)の半分の税金を支払います。
<もし業績が悪化していたら?>
前期より業績が悪化していれば、「仮決算」という方法で予定納税の額を減らすことができます。(若干の手間はかかりますが)
消費税
どんなとき? | 消費税の納税義務者のとき |
いつ? | 決算日から2ヶ月以内に |
いくら? | 預かった消費税と、払った消費税の差額を払う(予定納税を控除した金額) |
2期前の売上が1,000万円を超えていれば消費税の納税義務者になります。
例)第1期の売上が1,200万円⇒
第3期は消費税の納税義務あり。
第1期と第2期は、2期前が存在しませんので、消費税の納税義務はありません。
次のような比較的大きな規模の会社の場合は、第1期、第2期も消費税の納税義務者になることがあります。
- 資本金が1,000万円以上の会社
- 第1期の最初の半年間の売上と人件費が、どちらも1,000万円を超える会社
消費税も「法人税・住民税・事業税」と同じタイミング(決算日から2ヶ月以内)で、税務署に申告書を提出して、税金を支払います。
支払う消費税は「売上で請求した消費税と、仕入や経費で支払った消費税の差額」です。
同じ売上でも、どれくらい仕入や経費があるかで、消費税は全く変わってきます。
どんな事業をしているかで、払う消費税は変わるってことね。
業種 | 払う消費税の目安 |
---|---|
卸売業 | 年間売上の1%くらい |
小売業 | 年間売上の2%くらい |
製造業 | 年間売上の3%くらい |
建設業・飲食業 | 年間売上の4%くらい |
サービス業 | 年間売上の5%くらい |
不動産業 | 年間売上の6%くらい |
例)サービス業で、売上が年間1,000万円の場合
(払う消費税の目安)
1,000万円×5%=50万円
要件を満たせば、上記とは違う「簡易課税」という方法で消費税を計算できます。
詳しくは、下記をご覧ください。
消費税の予定納税
どんなとき? | 前期の消費税額が60万円以上のとき |
いつ? | 前期の決算日から8ヶ月以内に |
いくら? | 前期に払った消費税の半額を払う |
消費税にも、予定納税(税金の前払い)があります。
前期に支払った消費税額が60万円以上の場合に、税金の前払いが必要。
「法人税・住民税・事業税」の予定納税と同じ時期(決算日から8ヶ月以内)に、税務署から送られてくる納付書で、前期に払った消費税の半額を払います。
※消費税の納税額が大きくなってくると、予定納税が複数回になる場合があります。
源泉所得税(個人の所得税)
どんなとき? | 給料(役員報酬)を払ったとき |
いつ? | 翌月の10日までに (届出をしたら毎年1月と7月に) |
いくら? | 給料から天引きした所得税額を払う |
会社は、給与(役員報酬)を払うときに、源泉所得税(個人の所得税)を天引きする義務があります。
天引きした所得税は、翌月の10日までに税務署に支払います。
通常は毎月所得税を納めますが、小さな会社なら、税務署に届出をすることで
- 1月から6月分までを、まとめて7月10日までに
- 7月から12月分までを、まとめて1月20日までに
6ヶ月をまとめての支払いが可能。
半年分まとめて払う方が楽なので、おすすめです。
個人住民税
どんなとき? | 給料(役員報酬)を払ったとき |
いつ? | 翌月10日までに |
いくら? | 給料から天引きした個人住民税を払う |
給与(役員報酬)を払うときは、所得税に加えて個人の住民税も天引きが必要。
天引きした所得税は、翌月の10日までに従業員が住んでいる市町村に支払います。
役所から金額が入った納付書が送られてきますよ。
償却資産税
どんなとき? | 機械や備品などの償却資産の評価額が150万円を超えたとき |
いつ? | 毎年6月ころに |
いくら? | 評価額が150万円を超えた部分の1.4%を支払う |
機械や備品を買ったら、払わないといけない謎の税金。
機械や備品などの償却資産がある場合は、毎年1月31日までに役所に償却資産の申告をします。
申告の結果、償却資産の評価額が150万円を超えていれば、役所から納付書が送られてきます。(毎年6月ころ)
払う税金は、評価額が150万円を超えた金額の1.4%です。
印紙税
どんなとき? | 印紙税の対象になる文書を作ったとき |
いつ? | 文書作った都度 |
いくら? | 文書によって決められた金額を払う(印紙を購入して貼る) |
印紙税の対象となる文書は、主には下記のものがあります。
- 契約書
- 5万円以上の領収書
上記の文書を作成したら、文書に印紙を貼りましょう。
印紙の金額は、文書の具体的な内容によって変わってきます。
詳しくは、こちらをご覧ください。
いちいち印紙を貼るのって、めんどくさいですよね。
ついつい貼り忘れてしまいがちですが、税務調査で印紙が貼っていない文書が見つかると、元々の印紙の3倍の金額を払わないといけません。
まとめ:会社にかかるコストを知る
税金は、会社運営のコストです。
コストが
- どんなときに
- いつ
- どれくらいかかるのか
は、経営判断をするうえで、とても大切。
また節税を考えるうえでも、これらの税金の基礎知識は必須です。
今回紹介した税金は、いずれ必ず発生する税金なので、ぜひ知っておいてくださいね。