会社を作って役員になったんだけど、自分に賞与を払ってもいいの?
払うことはできますが、あまりおすすめしません
今回の記事では、自分に役員賞与を払うことをおすすめしない理由について解説します。
なおこの記事は、小規模な会社向けに書いています。
役員賞与を払うことをおすすめしない理由
役員賞与をお勧めしない理由は、厳しいルールを守らないと、経費にならないからです。
通常の役員報酬とは違って、役員への賞与には厳しいルールがあります。
ルールを守らないと、役員賞与を経費にできず、税金が高くなってしまいます。
役員賞与を自由に認めてしまうと
- 利益が沢山出るから役員賞与を増やす
- 赤字になるから役員賞与を減らす
というように、利益調整に使われてしまうから。
どのようなルールがあるか見ていきましょう
役員賞与のルールとは?
役員賞与を経費にするためには、次のルールを守らないといけません。
- 税務署に届出書を提出すること
- 届出書に書いたとおりに支給すること
税務署に届け出を提出すること
届出書の名前は「事前確定届出給与に関する届出書」といいます。
届出書はこちら(国税庁HPに飛びます)です。
「経費にできる役員賞与のこと」を「事前確定届出給与」と言います。
名前は覚えなくても大丈夫です
届出書に書くこと
色々な記載事項がありますが、特に大事なのは
- 役員賞与の支給予定日
- 役員賞与の支給予定額
です。
後述しますが、届出書は賞与の支給より前に提出しなければなりません。
将来の資金繰りのことを考え、払える時期に払える額を書くことが重要です。
また支給予定日については、カレンダーを確認して、金融機関が空いていない土日を避けてください。
届出書の提出期限
届出書には提出期限があります。
提出期限までに届出書を提出しなかったら、役員賞与を経費に入れられません。
役員賞与を払えないってこと?
届出書なしでも役員賞与を払えます。
ただし払った役員賞与を経費に入れるためには届出書の提出が必要です
届出書の提出期限は、下記の①②のうち、どちらか早い日になります。
- 株主総会の決議日から1ヶ月経過する日
- 期首から4ヶ月経過する日
<具体例>
事業年度:4/1~3/31
株主総会の決議日:6/25
①.株主総会の決議日から1ヶ月経過する日⇒7/25
②.期首から4ヶ月経過する日⇒7/31
③.①②のうち、どちらか早い日⇒7/25(提出期限)
<株主総会の決議日とは?>
役員の賞与は、株主総会で支払金額を決めます。
株主総会で役員賞与の金額を決定した日が、株主総会の決議日です。
株主総会なんてしてないんだけど・・・
一人会社の場合は、しても意味がないので、実態として省略することも多いです。そんな場合でも株主総会の議事録を作って、役員報酬を決定した証拠を残しておいてください
届出書に書いたとおりに支給すること
役員賞与は上記の届出書の通りに支払わないと、経費になりません。
届出書に書いた日に、届出書に書いた金額を支払ってください。
もし、支払日が一日ズレたり、違う金額を支払ったりすると、役員賞与の全額が原則経費になりません。
- 支払うのを忘れていた
- 銀行が閉まっていて、支払えなかった
- 支払う金額を間違えた
上記のようなことは、普通に起こります。
「ついうっかりしてて・・・」が通用しないのが役員賞与なのです。
やむを得ない事情があるときは、支払日がずれても経費にできる可能性はあります。税務署に厳しくつっこまれるのは確実ですけど・・・
役員賞与の代案はある?
役員賞与以外の方法で自分の取り分を増やす方法はあるの?
次の2つの方法があります
- 月額の役員報酬を増額する
- 会社で生命保険に入る
月額の役員報酬を増額する
毎月の役員報酬は、ルールはあるものの、役員賞与ほど厳しくはないです。
毎月、同額を支払うこと
ルールはこれだけです。
毎月同額を支払うのが原則ですが、役員報酬の場合は資金繰りの都合で払えなかったとしても経費に計上できる可能性は高いです。
毎月の役員報酬の増額方法は、次の通りです。
<役員報酬の増額方法>
- 期首から3ヶ月以内に増額する
(注)期首から4ヵ月目以降に増額すると、増額分が経費にならない
会社で生命保険に入る
役員賞与や、役員報酬を払う代わりに、会社で生命保険に入るという選択肢があります。
なぜ、生命保険に入るのが代わりになるの?
本来個人で入る予定の生命保険を、会社で契約すると…
保険料は会社が払うので、役員は保険料を払わなくて済みます。
つまり、報酬をもらうのと同じ効果がある。というわけです。
また、個人で生命保険料を払うと、少ししか経費(所得控除)になりません。
会社で生命保険料を払うと、全額が経費になるというメリットがあります。
※掛け捨ての生命保険の場合
結論:役員賞与はおすすめしません
役員賞与は「届出書通りに支払わないと経費にならない」というリスクがあります。
届出書通りに払えないことは結構ありますので、個人的には役員報酬はおすすめしません。
もし会社からの取り分を増やしたいなら
- 毎月の役員報酬のを増額する
- 会社で生命保険に入る
という方法をおすすめします。