個人事業主の節税をネットで調べると、様々な情報がでてきます。
ただ、色々な情報がありすぎて、その中から自分に合った節税方法を選ぶのは中々難しいです。
そこで本記事では、数ある節税方法を体系的に整理し、一目で自分に合う節税方法が分かるようにまとめてみました。
- 個人事業主の節税方法が、網羅的に理解できる
- 自分に合った節税方法が分かる
- どういう順番で節税すればいいか分かる
名前:スフィンクス(税理士)
税理士業界で、10年間経験を積んだのち独立。
小規模事業者の経営支援や、法人化コンサルを中心に活動中。
所得の分散による節税
税金は、一人で稼ぐよりも「二人で稼ぐ」または「一人と会社」で稼いだ方が安くなります。
その理由は、所得税で採用されているのが超過累進税率だからです。
- 超過累進税率とは
-
所得が多い人ほど高くなる税率
最低5%~最高45%までの幅がある
つまり、一人に所得が集中するほど税率が高くなり、所得が分散されるほど税率が低くなります。
所得を分散する方法は、主に次の3つです。
- 青色事業専従者給与
- マイクロ法人の設立
- 個人事業主の法人成り
詳しく解説していきます。
青色事業専従者給与
家族に給料を払うことで、所得を分散する方法です。
配偶者が働いていない人
家族に給料を払えば、あなたの所得の一部が、家族の所得となります。
所得が分散されることにより低い税率が適用され、世帯全体の税金が安くなります。
- 青色申告をしていること
- あなたの事業に専属で働いていること。
上記の要件があるため、「青色申告専従者給与」といいます。
また、給料を受け取った家族には、次の控除が適用されます。
適用される控除 | 控除額 |
---|---|
給与所得控除 | 最低55万円 |
基礎控除 | 48万円 |
合計 | 103万円 |
103万円までなら、無税で家族に移せるってことね。
青色事業専従者給与の届出方法や詳しい要件は、下記をご参照ください。
関連記事:【節税】家族給料を経費にする4つの条件【自営業・フリーランス】
マイクロ法人の設立
法人を設立し、事業の一部を法人に移すことで所得を分散する方法です。
- 種類が違う2つ以上の収入がある人
- 国民健康保険料がとても高い人
事業のうち一部しか法人に移さないので、「個人事業主」と「法人」の2つの立場で、事業を運営します。
個人事業主としては、法人に移した分だけ収入が減るので、税金が安くなります。
さらに、会社から給料を受け取ることで、社会保険制度が「健康保険・厚生年金」に代わりますので、大幅に社会保険料を減らせる可能性があります。
マイクロ法人について詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
関連記事:個人事業主がマイクロ法人を作る4つのメリット【社会保険料の削減や節税も!】
個人事業主の法人成り
個人事業を廃業し、事業のすべてを法人に移す方法です。
- 個人事業主としての所得が1,200万円以上ある人
- 法人の信用力を活かして、事業を拡大していきたい人
事業の全てを法人に移しますので、収入は全て法人に入り、法人から給料を受け取る形になります。
儲けている人ほど「個人事業主の法人成り」をおすすめします。
理由は、儲けている人は税率がとても高い(住民税も合わせると、税率は最高55%にもなる)から。
法人の場合、法人税・住民税・事業税を合わせて約35%ほどしかかかりません。
つまり、儲けている人は「個人事業主として稼ぐ」より、「法人として稼ぐ」方が手持ち資金は多くなるのです。
支出を伴わない節税
節税は基本的には支出を伴います。
何らかの形でお金を動かさないと、税金は安くならないのです。
ただし、たった一つだけ例外があります。
それが青色申告特別控除です。
お金を動かさなくても使える節税方法なので、手持ちのお金がない方でもできる節税です。
すべての個人事業主
控除額には10万円、55万円、65万円と3パターンあります。
それぞれの控除を受ける要件は、次の通りです。
- 10万円⇒青色申告をするだけ
- 55万円⇒①に加えて、複式簿記で帳簿を付け、貸借対照表を作る
- 65万円⇒②に加えて、電子申告をする
<55万円の要件を満たすには?>
会計ソフトで帳簿を付ければ、自動的に要件を満たせます。
<65万円の要件を満たすには?>
マイナンバーカードとカードリーダーがあれば、国税庁ホームページから電子申告できます。
上記を満たすのが難しいなら、税理士に頼むのも有りです。
貯蓄性のある支出で節税
貯蓄性のある共済に掛け金を払い、控除を受けることで節税する方法です。
所得控除として控除を受けられるものと、事業所得の経費に計上できるものがあります。
所得控除ができるもの | 小規模企業共済 イデコ |
経費に計上できるもの | 倒産防止共済 |
小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主の退職金を用意するための共済です。
手持ち資金に余裕がある人
掛け金の全額が所得控除でき、かつ数年かけていれば元本割れもしません。
また、引退時に掛け金を受けとると退職金扱いになり、税金が物凄く優遇されます。
<退職金の税金>
退職金は引退後の生活保障の観点から、税金が優遇されています。
20年共済をかけ続け、1000万円を受け取った場合の所得税は5万円程度。
事業所得が1000万円なら数百万円の所得税がかかることを考えると、超破格の待遇です。
さらに、小規模企業共済から掛け金の範囲でお金を借りれるので、万が一将来お金に困ったとしても安心です。
まさに、万能の節税商品です。
小規模企業共済について、もっと詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
IDECO
イデコは老後資金を用意するための年金制度の一種です。
- 小規模企業共済を払っても、まだ手持ち資金に余裕がある人
- 60歳になるまでお金を引き出せなくても大丈夫な人
IDECOは掛け金の運用先を自分で決められるのが特徴です。
投資と同じですので、基本的には元本割れの可能性がありますが、一部元本が保証されている運用先もあります。
この制度も小規模企業共済と同じく、掛け金の全額が所得控除でき、かつ受け取り時には退職金扱いになります。
中途解約できず、60歳までお金が返ってこないこと
小規模企業共済のように、貸付制度もありません。
なので、資金に余裕がない方は、慎重に検討してください。
先に小規模企業共済の掛金を払い、それでも余裕があれば、イデコを始めてみることをおすすめします。
倒産防止共済
取引先が倒産したときに、掛金の10倍まで借入ができる共済です。
- 小規模企業共済、IDECOをしても、まだお金に余裕がある人
- とにかく目先の税金を減らしたい人
倒産防止共済は掛金の全額を、事業所得の経費にできます。
また、数年掛け金を払えば元本も保証されます。
ただし、倒産防止共済を解約した時の解約手当金は、事業所得の収入になります。
つまり、実質的には今の税金を将来に先延ばしにしているだけです。
お金が余っていて、とにかく目先の税金を減らしたい方におすすめします。
経費による節税
事業所得の経費を増やして、節税する方法です。
「貯蓄性のある支出で節税」と「経費による節税」の違いは下記のとおりです。
貯蓄性のある支出 で節税 | 経費による節税 | |
---|---|---|
リスク | ほぼなし | あり |
金額 | 制限あり | 制限なし |
種類 | 少ない | 多い |
「貯蓄性のある支出」はリスクがほぼないものの、金額や種類に限りがあります。
なので、「貯蓄性のある支出」をやり切ったら、「経費による節税」をしていくことになります。
経費による節税は大きく分けると、次の2つです。
- 備品の購入による節税
- 簿外資産に投資して節税
備品や機械の購入による節税
- 備品や機械が古くなってきている人
- 新しい備品や機械の購入で、生産性が上がる人
青色申告をしていれば、1個30万円未満の備品や機械は一度に経費に計上できます。(年300万円まで)
- この制度を使って経費にできるのは、年間300万円までです。
- 1個30万円以上のものは減価償却の対象となり、一度に経費にできません。
簿外資産に投資して節税
積極的に売上を増やしていきたい人
- 簿外資産とは?
-
帳簿には載っていないが、将来売上を増やしてくれる資産的価値のあるもの
例えば、次のようなものが該当します。
- 自社のWEBコンテンツ
- WEBマーケティング力
- 自社ブランド
- 商品の開発力
- 人脈
簿外資産に投資すれば、目先の税金を減らしつつ、将来の売上を増やせます。
一石二鳥だね。
ただし、投資した金額が必ずしも回収できるわけではありません。
利益や財務状況を見ながら、リスク許容度の範囲で簿外資産に投資していきましょう。
関連記事:経費を使うときの最重要ポイント→簿外資産を作ること【節税と浪費の違いとは?】
将来の売上に貢献しない支出は、ただの浪費ですので節税とは言えません。
節税対策の順番
どういう順番で節税対策したらいいの?
おすすめの順番は、次の通りです。
- 青色申告特別控除
- 青色事業専従者給与
- 小規模企業共済
- iDeCo
- 備品の購入による節税
- 簿外資産に投資して節税
倒産防止共済は、税金を先送りにしているだけなので、個人的にはやらなくても良いと思っています。
ここに、載っていない「マイクロ法人」や「個人事業主の法人成り」は、税理士に相談してから取り組むようにしましょう。
まとめ:節税方法を体系的に理解しよう
節税方法が体系的に理解できれば、
- 今どこまで節税対策ができているか?
- これからどんな節税対策をすべきか?
が見えてきます。
ぜひ本記事を参考に、節税にチャレンジしてみてくださいね。
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