一人で事業をしているけど、会社にした方が良いのかな?
上記の相談は、個人事業主の方から受ける相談の中で、最も多いものです。
今回は、一人で事業をしている個人事業主の方へ向けて、一人会社を作る6つのメリットを解説していきます。
- 個人事業主と会社の本質的な違いが分かる
- 一人会社のメリット・デメリット・注意点が分かる
- 一人で効率的に会社を運営するポイントが分かる
名前:スフィンクス(税理士)
税理士業界で、10年間経験を積んだのち独立。
小規模事業者の経営支援や、法人化コンサルを中心に活動中。
一人会社とは
- 一人会社とは?
-
社長一人しかいない会社のこと
会社といえば、従業員を何人も抱えているイメージがありますが、一人会社の場合、従業員はいません。
社長がたった一人で会社を運営していきます。
たった一人で運営していくところは、個人事業主と同じです。
しかし、「会社」という組織になることで、様々な個人事業主との違いが発生します。
まずは、個人事業主と会社との本質的な違いを抑えましょう
一人会社と個人事業主の違い
事業から発生したすべての資産・負債は会社のもの
会社の活動で生まれたすべてのものは、会社のもの。
資産(財産)だけではなく、負債(借金)も同じです。
これは、会社と個人(あなた)とを完全に別のものと考えるためです。
つまり、
会社のお金を、個人が勝手に使ってはいけない。
※会社のお金を使いたいなら、役員報酬や配当金として受け取ってから。
会社が抱えた借金を、個人が返す必要はない。
※社長が借金の保証人になっているなら、返す義務があります。
ということになります。
個人(あなた)は株主として、会社の資産を間接的に保有する
会社を作った個人(あなた)は、会社の株主となります。
株主は、会社の支配権を握っているので、間接的に会社の資産を保有しているのと同じ。
負債も間接的に保有していることになるの?
株主は、会社の負債を保有していることにはなりません。
理由は、株主は会社に出資した金額(資本金)の範囲内で責任を負う(有限責任)とされているからです。
株主は、最初に出資した資本金を失う可能性はありますが、それ以上の損失が出ることはありません。
<会社を(解散)廃業したらどうなる?>
廃業時に、資産が余っていれば、株主に配当金が支払われます。
逆に、負債の方が多い場合、最初に出資た資本金を失うだけで、それ以上の負債を背負うことはありません。
※借金の保証人になっている場合を除く。
個人(あなた)は役員として、会社から報酬を受け取る
役員報酬はどうやって決まるの?勝手に決めていい?
一人会社なら自分で自分の役員報酬を決められますよ
役員報酬を決める権利は「株主」が持っています。
一人会社の場合は、多くの場合は「株主」=「役員」=「あなた」ですので、会社から受け取る報酬を自分で決められます。
起業の際に、外部から資金調達するときは、株式の保有割合に注意しましょう。
絶対に自分で51%以上を保有するようにしてください。
一人会社のメリット
所得税が安くなる
所得税が安くなる理由は、給与所得控除が使えるからです。
- 給与所得控除とは?
-
給与所得にだけ認められた控除のこと(最高195万円:子育て世代は210万円)
控除額は、役員報酬の金額に比例して大きくなりますが、役員報酬850万円→控除額が195万円で頭打ちとなります。
また、子育て・介護世帯は特別に上限が設けられており、役員報酬1,000万円→控除額が210万円で頭打ちです。
節税の選択肢が広がる
会社にすると、個人事業主のときより、節税の選択肢が広がります。
- 生命保険料が経費にできる
- 赤字を10年間繰り越せる
- 所得の分散がしやすくなる
- 法人の税金が個人と比べて安いので、法人に利益を残す
- 自分に退職金を支給する
事業が儲かっているほど、節税メリットの恩恵は大きくなります。
無限責任から有限責任に代わる
個人事業主は無限責任です。
事業のすべての責任は個人が負い、借金は私財を投げ売ってでも返済する義務があります。
それに対して一人会社は、会社と個人が完全に切り離されています。
会社の事業が失敗し、会社が借金まみれになっても、個人の返済義務はありません。(保証人になっていなければ)
昔は「借金=代表者保証」でしたが、最近は代表者保証なしの借金もあります。
良い取引先を探しやすくなる
個人事業主と、会社の社長では、周りからの印象がだいぶ違います。
新しい取引先を開拓するなら、会社の社長を名乗った方が、信用される可能性は高いです。
一人の会社でも信用される?
個人事業主よりも一人会社の社長の方が、信用される傾向があります。
それに相手方からすると、あなたの会社が一人会社なのか、従業員が沢山いる会社なのかは、基本分かりません。
「資本金」は登記簿謄本を取得すれば、誰でも自由に見ることができます。
「資本金」が大きければ、「きちんとした会社」という印象を持ってもらえる傾向があるので、資本金を大きくするのも信用力を上げる一つの方法です。
※資本金が1000万円以上になると、税金が増える可能性があるので注意。
優秀な人材を採用しやすくなる
一人会社も、事業が大きくなると従業員を採用するときが来るかもしれません。
採用活動においては、個人事業主よりも会社の方が有利。
理由は、求職者が個人事業主の求人を敬遠しがちだからです。
求職者は、できれば社会保険やコンプライアンスがしっかりしているイメージがある「会社」で働きたいのです。
通常の会社と比較すると、一人会社は身軽
通常の会社と比較すると、一人会社は下記の3つの点で身軽です。
- 固定費
- 意思決定の速さ
- 手続きの手間
固定費
従業員がいないので、人件費や家賃、消耗品などが節約できます。
意思決定の速さ
個人事業主と同じように、すべてを自分で決められます。
部署間の調整など必要なく、迅速な意思決定が可能です。
手続きの手間
社内の調整が必要ないので、社内の手続きを極限まで減らせます。
一人会社は、「会社の信用力を確保しながら、個人事業主の身軽さを持った組織」と言えますね
一人会社のデメリット
設立費用がかかる
会社を設立するには、税金や司法書士の費用がかかります。
具体的には、株式会社なら約24万円、合同会社なら約10万円ほど。
個人と会社を明確に区別しなければならない
会社を作ったら、個人と会社を明確に分けないといけません。
個人の私的な経費を、会社で支払うのはNGです。
確定申告の難易度が高い
会社の確定申告は、個人と比べて難易度が高いです。
専門知識がない状態で、会社の確定申告を行うのはほぼ不可能なので、税理士に頼まざるを得なくなります。
社会保険料などのランニングコストが高くなる可能性がある
会社にすると、個人事業主のときより、ランニングコストが高くなる傾向があります。
- 住民税の均等割り
- 社会保険料
- 税理士費用 など
デメリットも知っておかないとね
一人会社で気を付けること
健康保険・厚生年金の加入義務がある
会社は「健康保険・厚生年金」の加入義務があります。
※従業員5人未満の個人事業主は、健康保険・厚生年金の加入義務なし。
個人事業主の場合は、通常「国民健康保険・国民年金」に加入していますが、「健康保険・厚生年金」に代わることで負担が増える可能性があります。(減ることもあります。)
福利厚生費が認められにくい
従業員の福利厚生の名目使ったお金は、福利厚生費として経費にできます。
※例えば、従業員の慰安目的の温泉旅行など
ただし一人会社の場合は、福利厚生費が認められにくい傾向があります。
理由は、一人会社は、福利厚生と私的な経費の区別が付きにくいからです。
なんでも経費にできるわけじゃないのね
自分の役員報酬をいくらにするか
「自分が会社からもらう役員報酬をいくらにするか?」は非常に重要な問題です。
役員報酬が多すぎれば、赤字になってしまい、資金不足になります。
逆に役員報酬が少なすぎれば、法人税が多くなります。
- 会社を大きくしたいなら、役員報酬を最低限にして会社に利益を残しましょう
- 事業の拡大より節税を優先するなら、会社と個人のトータルの税金が最も少なくなるように役員報酬を設定しましょう
役員報酬の設定のタイミングは、期首から3カ月以内と決まっています。
つまり、今期の業績を予測して役員報酬を設定する必要があります。
信用力の株式会社 OR 設立コストの合同会社
会社の形態は「株式会社」と「合同会社」のいずれかから選びます。
細かな違いは色々とありますが、下記の2点だけ抑えておけばOKです。
- 株式会社の方が、信用力がある
- 合同会社の方が、設立費用が14万円ほど安い
信用力ってどの程度ちがうの?
経営や事業に詳しい人なら、「合同会社=小さい会社」というイメージを持ちます。
もし「小さい会社」のイメージを持たれたくないなら、株式会社にした方が無難でしょう。
全くイメージを気にしないのであれば、合同会社でOKです。
会社の設立は自分でできるか?
会社の設立は自分でもできます。
「マネーフォワード会社設立」や「freee会社設立」を使えば、会社のことに詳しくない方でも簡単に会社を設立できます。
ただし、下記のことで悩まれる方は、事前に税理士や司法書士などの専門家に相談した方がいいかもしれません。
- 家族を役員にすべきか
- 資本金をいくらにすべきか
- 定款の事業内容は何を書けばいいか
ひとり会社の運営で必要な知識
最低限の税金の知識
税金は会社運営のコストです。
コストが「どんな場合に、いつ、いくらぐらい発生するか」を知っておかないと、予想外の出費に苦しむことになります。
税金の計算方法を詳細に知っておく必要はありませんが、最低限の知識は押さえておきましょう。
関連記事:小さな会社にかかる税金まとめ【どんなとき・いつ・いくら払う?】
社会保険の手続きの知識
個人事業主と違い、会社では強制的に社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務が発生します。
手続きを社会保険労務士に外注してもいいですが、一人会社ならそれほど手間はかかりませんので、ご自身でされることをおすすめします。
年金事務所のホームページでは、社会保険手続きについて詳しく解説されていますので、参考にしてください。
便利ツール・サービスの知識
一人会社では、従業員は自分ひとりだけ。
会社運営に必要な事務や手続きを、自分一人でしていく必要があります。
そのため、事務を効率化できる便利ツールの知識はとても重要です。
ここから一人会社でおすすめの便利ツールを紹介します
ひとり会社で役に立つツール・サービス
電子契約
- 電子契約とは?
-
紙を使わずに、データに電子署名を施して契約できるサービスのこと
電子契約をすれば、ペーパレスで効率化でき、印紙代の節約にもなります。
無料で使える電子契約サービスも多数ありますので、一人会社でも気軽に始められます。
クラウド会計
- クラウド会計とは?
-
オンライン上にデータを保存する会計ソフトのこと
クラウド会計を使えば、ネットバンクやクレジットカードの取引データと連携ができ、圧倒的に経理を効率化できます。
また、税理士とリアルタイムにデータ共有ができるため、面倒なデータのやり取りもなくなります。
- マネーフォワード会計
- freee
オンライン秘書
一人会社だと、どうしても人で不足になりがち
かといって人を雇うほどの余裕がない・・・
そんな時おすすめなのが、オンライン秘書です。
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Google関連のツール
Googleのアカウントを持っているだけで、様々なツールが無料で使えます。
Googleドキュメント・スプレッドシート・スライド
事務処理で一般的に使われているのがマイクロソフトのOfficeですが、Officeはとても高いです。
一人会社なら無料で使える「Googleドキュメント・Googleスプレッドシート・Googleスライド」で十分かと思います。
Officeと比較すると、操作性はやや劣るかもしれませんが、他人と共有しやすいというメリットがあります。
実はオフラインでも使えます
Googleドライブ
Googleが提供するオンラインストレージです。
15GBまでなら無料で使えて、他人とのファイル共有もできます。
Googleカレンダー
スケジュール管理に利用できます。
こちらも他人と共有が可能です。
Googleアナリティクス
自社ホームページのアクセス分析のためのツールです。
ホームページに訪れたユーザーの属性(性別や年齢)なども分かります。
Lighthouse
Lighthouseは自社ホームページのパフォーマンスを計測できるGoogleクロームの拡張機能です。
「表示速度が遅くないか?」「スマホで正しく表示されるか」など、パフォーマンスに異常がないかチェックできます。
まとめ
一人会社は、法人の信用力と個人事業主の身軽さを兼ね備えた組織です。
ただし、会社にすると社会保険料の加入義務や、確定申告の難易度が高くなるなどのデメリットもあります。
総合的に判断して、自分の事業に合った選択をしましょう。
当事務所は100件以上の法人化のコンサル実績があります。
あなたの相談をお待ちしております。
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