- 会社を作れば節税ができるって本当?
- 会社ってなんとなく大変そうで不安。
- 法人化のリスクも知っておきたい。
今回はこれらのお悩みにお応えしたいと思います。
税理士として多くの開業、廃業を見届けてきた経験から、会社を設立する際のリスクと注意点を皆様にお伝えします。
私のプロフィールはこちらです。
会社を設立して後悔しないための注意点
- 節税できるって聞いたから
- なんとなく会社の方がかっこいいから
こういった理由で安易に法人化してしまうのは大きなリスクがあります。
一度法人化すると簡単には個人事業主に戻れません。
後悔しないように、次の3つの注意点を知っておきましょう。
- コストの注意点
- 手間の注意点
- 責任の注意点
コストの注意点
会社を設立すると、思ってもみなかったコストが発生します。
節税目的で法人化にしたのに余計にコストがかかり、結局法人化の意味がなかった。
なんてこともありえます。
後悔しないためにも法人化でどんなコストが発生するか知っておきましょう。
発生してくるコストは次のものがあります。
- 会社を設立するための登記費用(約30万円)
- 引っ越しをするたびに発生する代表者の住所変更の登記費用(数万円)
- 社会保険料(会社負担は給与の15%程度になります)
- 会社が存在するだけで発生する税金(年間約7万円)
- 税理士の報酬(申告書作成の難易度が高くなるため、個人事業主の時より高くなります。)
上記のうち1は設立時の1回だけ発生するコスト。
2は臨時的に発生するコスト。
3から5は毎月(毎年)発生するランニングコストです。
この中で最も大きい負担になるのが、3の社会保険料です。
会社を設立すると強制的に社会保険に入らなければなりません。
社会保険に入ると従業員(社長も含む。)の社会保険料の半額を会社で負担します。
例えば、年収300万円の従業員を一人雇うなら、約45万円の社会保険料を会社が払わないといけないのです。
よ・・・45万円!?
「多少節税ができても社会保険料でぶっ飛んでいく」と覚えておいてください。
手間の注意点
会社を運営していると個人事業主のときより、やたらと手間がかかります。
「こんなに面倒くさいなら法人化するんじゃなかった!」と後悔しないように、どのような手間が増えるのか知っておきましょう。
経理の手間
会社にすると、個人事業主よりも厳格な経理書類を提出が必要。
個人事業主で許されていたざっくりとした経理はできません。
会計ソフトにデータ入力して、きちんとした帳簿を作成する手間がかかります。
もし手間をかけたくないのであれば、事務員を雇うか、税理士に外注することになります。
手続きの手間
前述したように会社にすると社会保険料に入らないといけません。
ただでさえ社会保険料の高さにうんざりするのに、手続きも多くてめんどくさいというダブルパンチ。
- 資格取得届(従業員を採用したとき)
- 資格喪失届(従業員が退職したとき)
- 月額算定基礎届(年1回)
- 月額変更届(給与が大きく変わったとき)
- 賞与支払届(賞与を払うとき)
- 労働保険の年度更新
漢字が5文字続くと目が回る持病が・・・
もし手間をかけたくないなら社会保険労務士に外注しましょう
責任の注意点
会社が銀行から借入する場合は、多くの場合は社長の連帯保証が必要。
連帯保証をする場合は、会社がつぶれたら社長の個人財産から借入を返済していくことに。
会社がもし借金を返せなくなったら、自分が返さなければならない。
事業を拡大していきたい方は、銀行から借入することを視野に入れている方も多いと思います。
そして事業が大きくなるほど借入額も大きくなる傾向があるので要注意です。
税理士から見て法人化したほうがいい個人事業主(フリーランス)
注意点についてお伝えしましたが、ここからは税理士目線で法人化したほうがいい個人事業主(フリーランス)がどのような方か解説します。
- 所得が1500万円を超えている方
- 事業拡大のために信用力が必要な方
所得が1500万円を超えている方
- 所得とは?
-
収入から経費を引いた残り(利益)のこと
所得が大きければ大きいほど、所得税は高い税率が適用されます。
所得が1500万の方の所得税は300万円程度、住民税も合わせると450万円近くにもなります。
※所得控除や住宅ローン控除がないものとした場合の税額です。
現状でこれほど多額の税金を払っている方は、法人化で大きな節税効果が期待できます。
- 会社にすると個人事業主の時より最高税率が下がる
- 消費税が2年間免除される(免除にならない場合もあります)
- 会社から給与を受け取ることで、給与の控除(給与所得控除)が使える
- 生命保険料を経費で落とせる
- 家族に給料を払える
これらの節税方法を組み合わせ、個人事業主の時よりもはるかに税金を抑えられます。
そして所得が大きいほど、節税効果も大きくなっていきます。
所得が1500万円を超えている方は、法人化のコストより節税効果の方が大きくなるため、法人化したほうが良いでしょう。
事業の拡大のために信用力が必要な場合
個人事業主から法人化することで対外的な信用力が高くなります。
- 銀行から借りれる金額が大きくなる
- 大きな会社と取引ができる可能性が高まる
- 優秀な人材を採用しやすくなる
- 個人としても代表取締役社長という肩書により、信用力が高まる
事業の拡大にこれらのメリットが必要なのであれば、現状の所得に関係なく法人化すべきです。
信用力を重視して、いきなり会社を設立して事業を始める方も沢山いらっしゃいます。
まとめ
一旦法人化してしまうと後戻りはできません。
後悔のないように、「コストの注意点」、「手間の注意点」、「責任の注意点」を知っておきましょう。
また税理士目線では所得が1500万円を超えているか、会社の信用力が事業拡大に必要な場合は法人化をおすすめします。