マイクロ法人が違法になることってあるの?
マイクロ法人で社会保険料を安くすることは、違法ではありません。
しかし、マイクロ法人の事業が、個人の事業と同じ場合は違法になってしまいます。
本記事では、この「法人と個人が同じ事業をしてはいけない問題」について、徹底解説します。
名前:スフィンクス(税理士)
税理士業界で、10年間経験を積んだのち独立。
小規模事業者の経営支援や、法人化コンサルを中心に活動中。
私の詳しいプロフィールはこちらです。
なぜ個人と同じ事業だと違法になるのか?
同じ事業が違法になってしまう理由は、
個人と法人が同じ事業だと、法人の実態がなくなってしまうから
です。
個人と法人が同じ事業をしていると、法人の存在意義が全く感じられません。(なぜ法人を作ったの?となります。)
また、どこまでが個人で、どこからが法人なのかが曖昧になります。
つまり、マイクロ法人が「実態がない、節税だけのための法人」になってしまうわけです。
法人は、実態がないと違法なの?
実態がない法人を使って、収入を分散させる行為は違法です。
根拠は、所得税法第12条「実質所得者課税の原則」という法律にあります。
こちらの法律を分かりやすくまとめると、下記のようになります。
- 収入は、実質的にその収入の恩恵を受ける人のものです!
- 実態のない法人の収入は、法人の収入として認めません!
- だから、実態がない法人の名義だけを使って、収入を法人に移すのはダメです!
この法律にひっかかるので、「違法」になってしまいます。
なので、マイクロ法人の事業は、必ず個人と違う事業にしましょう。
<法人の収益が全くなく、赤字になっている場合について>
法人の準備期間中、売上が上がらないのは良くある話です。
また、個人の収入を法人に分散させている訳ではないので、違法にはなりません。
違法認定されるとどうなるのか?
もし違法と認定された場合は、法人の収入を個人事業主の収入として、個人事業主の確定申告のやり直しが必要。
その結果、
- 所得税
- 住民税
- 消費税
を、追加で納税することに。
もちろん、過少申告加算税や延滞税といった追徴税も発生します。。。
違法な行為には、ペナルティがあるのね
「同じ事業」の判断基準は?
残念ながら、「同じ事業」の判定基準は、法律には書いていません。
なので、それぞれのケースで個別に判断することになります。
判断のポイントは、
- 一つの事業を、無理やり二つに分けていないか?
- 法人を作った理由(節税以外の)を、税務署に説明できるか?
の2つです。
上記の2つとも「YES」なら、「同じ事業」と認定される可能性は非常に低いです。
次は、具体的なケースを見ていきましょう!
合法、違法の具体的な判断例
以下の判断例は著者の見解です。税理士によっても見解は違うので、参考意見としてお考え下さい。
合法なケース1:個人でエンジニア、法人はコンサルティング
- 一つの事業を、無理やり二つに分けていないか?
⇒エンジニアは、コーディングした成果物の納品。
⇒コンサルティングは、課題解決のための相談や指導。
明確に違う事業であり、無理やり2つに分けている訳ではない。 - なぜ法人を作ったか、税務署に説明できるか?
⇒コンサルティング事業は、経営の可視化・リスク分散の観点から、エンジニア事業と運営母体を分ける必要があった。
また、対外的な営業活動も行っていく予定であるため、信用力がある法人で運営することにした。
という説明ができる。
①②ともYESなので、合法
合法なケース2:個人は店舗サービス、法人はECサイト販売
- 一つの事業を、無理やり二つに分けていないか?
⇒店舗サービスは、店舗に来店した顧客にサービスを提供する仕事。
⇒ECサイト販売は、ネット経由で商品を販売する仕事。
明確に違う事業であり、無理やり2つに分けている訳ではない。 - なぜ法人を作ったか、税務署に説明できるか?
⇒ECサイト販売は、経営の可視化・リスク分散の観点から、店舗サービスと運営母体を分ける必要があった。
また、今後複数のECサイトを展開する可能性もあり、従業員の採用も想定されるため、採用活動に有利な法人で運営することにした。
という説明ができる。
①②ともYESなので、合法
違法の可能性があるケース1:個人は商品販売、法人は商品の発送代行
- 一つの事業を、無理やり二つに分けていないか?
もともと商品販売から商品の発送まで、個人事業主として行っていた。
マイクロ法人の設立にあたり、商品の発送部分を法人で行えないか考えた。
⇒発送まで含めて商品の販売と考えられるので、無理やり分けている感が否めない。 - なぜ法人を作ったか、税務署に説明できるか?
商品発送だけのための法人を作る合理的な理由はない。
①②ともYESではないので、違法の可能性がある。
違法の可能性があるケース2:個人は建設業、法人は個人のマーケティング事業
- 一つの事業を、無理やり二つに分けていないか?
建設業とマーケティング業は全く違う仕事なので、無理やり事業を分けている訳ではない。 - なぜ法人を作ったか、税務署に説明できるか?
個人のマーケティングは、結局法人の従業員である個人自身が行うことになる。
そのため、法人を経由させているだけであり、敢えて法人を作る理由はない。
②がYESではないので、違法の可能性がある。
マイクロ法人が違法にならないためにすべきこと
違法にならないためには、下記の5つのことをしておきましょう。
- 外部からの売上を確保する
- 契約が必要なものは、法人名義にする
- 法人名義で書類の作成を行う
- 売上は法人口座に入金させる
- 経理や事務を個人と法人でぐちゃぐちゃにしない
外部からの売上を確保する
個人事業主と、自分が作った法人の間での仕事の受発注は、実態を厳しくチェックされます。
そのため、外部からの売上をマイクロ法人の売上にしましょう。
契約が必要なものは、法人名義にする
収入が、法人の事業から生じたことを明らかにするため、業務委託契約は法人名義で締結しましょう。
法人名義で書類の作成を行う
請求書や領収書の発行は、法人名義で行いましょう。
売上は法人口座に入金させる
法人の売上であることを明らかにするため、売上は法人口座に入金させましょう。
経理や事務を個人と法人でぐちゃぐちゃにしない
実態がある法人であることを示すために、経理や事務は個人事業主と分けて行うようにしましょう。
結論:法人では必ず個人とは違う事業をしよう
マイクロ法人は合理的な節税方法です。
しかし、実態がない法人を使って、所得を分散させるのは「違法」になってしまいます。
マイクロ法人では「個人事業主とは違う事業」を行い、実態がある法人を作るようにしましょう。
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